恋を、拳と共に
走り終えた私はトラックの中に歩いていった。
膝に両手をついて前屈みになり、息を整えていると、足音が近づいてきた。
秦野くんだ。
「へへ、全力出したよ」
今度は私が先に声を掛ける。
「やっぱ、藤沢って、すげーや」
秦野くんは荒い息をつきつつ言うと、私の斜め向かいの位置に膝を抱えるようにしてしゃがんだ。
そして、下から私を見上げてわずかに微笑みながら、私に向かって右手を差し出して、言った。
「和解の握手」
ん? ワカイ……和解?
そうだ、謝らないといけなかった。