恋を、拳と共に
今年の優勝は、私たちの組ではなかった。
でも嬉しいことに、私たち応援団は応援賞をもらうことができた。
夏休みから頑張ってきたことが実を結んで、ほんとによかった。
秦野くんにも謝ることができたし、かっこよかったって言われたし、
何より本気で一緒に走ることができて楽しかった。
"絆"というとヘンな感じだけど、確かなつながりのようなものができたと思う。
そして、さっきは、握手までしちゃった。
――秦野くんの手、大きかった。
今、自分で自分の右手を包んでみても、さっきと全然違う。
何ていうか、温かい気持ちで包まれていたような、そんな感じだった。
今までいろんな人と手をつないだけど、思い出してドキドキしてしまうようなことは、初めてかも。
やっぱ、藤沢って、すげーや……って言われてドキドキしちゃったのも、
たぶん、走り終わった直後だからではない、のかも。
片づけをしながらそんなことを考えていると、応援団長から応援賞の賞品が配られた。
賞品は、各自に「購買パン引換券(ひとり1回1個限り)」2枚と消しゴム1個だった。
……学ランは進藤くんに借りたけど。
でもこのパン引換券は、お礼にくれって言われても、秦野くんから言われても、誰にもあげたくない。
ちゃんとお礼は別の形でするつもりだし。
だから、誰に何と言われようと、誰にも、あげないよー!
賞品の入った袋を抱きしめながら、私はひとり、心に誓うのだった。