恋を、拳と共に
「全部食べちゃうの、もったいないねぇ。ホントにおいしい」
残りあと1個になって、名残惜しくなってしまった。
「ねー。もったいないね」
千里も1個を残して、ウーロン茶を飲んでいる。
「でも、ちょっと元気が出たみたいで、よかった」
小さい声で千里が言う。
「何だか、気を遣わせちゃって、ごめんね」
私も小声で、千里に謝る。
「もう、だからー、茜は悪くないでしょう? 謝らなくていいんだってば」
千里は半分怒ってる声で、私を見ながら言う。
「……早く、茜ブームが過ぎるといいね」
私は自嘲気味に笑い、下を向いて、頷く。
最後の1個を、ぱくっと、口に入れた。
おいしいたこ焼きを最後まで味わって、ウーロン茶を飲み干して。
「よしっ、明日から、また頑張るぞっ」
私はお店の迷惑にならない程度の大きさの声で気合いを入れ、立ち上がった。