恋を、拳と共に
うわ、落ちる、落ちちゃう。
手すりに手を添えて、階段を上ればよかった……
と、流れる景色を見ながら思ったとき。
どんっ、と、階段じゃないものにぶつかって止まった。
――あれ。
かなりの痛みを覚悟していたけど、痛くない。
ほぼ逆さまになって止まると思ってたけど、身体は水平向き。
おまけに、軽く丸まってて。
「大丈夫?」
「だ、だいじょうぶ……です……」
答えたものの、状況が把握できない。
「危なかった」
「はい、あぶなかっ……ぅえぇ?」
私は激しくうろたえた。
――お、お姫さま抱っこ、されてるっ……!