恋を、拳と共に
そのまま萩野さんはミニあんドーナツの袋を開けて、
「せっかくだから、秦野くんも一緒に食べよっ」と勧めてくれた。
萩野さんに逆に勧められたドーナツを食べながら、ニコニコしているふたりを見てほっとしていると、藤沢が言った。
「じゃあ、午後の授業も頑張るから。ノートの用意、しといてね」
これで貸し借りナシになったと思ったのに、まだ頑張っちゃうのか、藤沢は。
「え、いやー、さすがにもう、悪いって」
慌てて断ってるのに、横から萩野さんまでもが、
「往生際が悪いなぁ、秦野くんは。今日はもう茜に任せたらいいのに」
などと言う。
俺は目を閉じてうなだれて、
「……わかりました、お任せします」
と、力なく言った。