恋を、拳と共に
――待て。
――落ち着け。
俺は、目を閉じ、ひと呼吸置いた。
それから、もう一度目を開けてノートを見た。
『秦野くんへ』
――間違いなく、藤沢の文字で記された、俺の名前。
胸の鼓動が早まるのを感じる。
恐る恐る、そのノートの隅の藤沢の文字を、目で追う。
『秦野くんへ
ノート取るよ、なんて無理やりな申し出をしちゃって、ごめんなさい
運動会以来、あまりお話しできなくなってしまったので、少しさみしく思ってました
またあのリレーの時みたいに、仲良く話せたらいいな…と思います』