恋を、拳と共に
「あ、わっ、私、すっ、すみませっ」
「暴れたら危ないから」
「ぅわ、は、はいっ」
おとなしく、縮まってみる。
そのまま足から、ゆっくり地面に降ろしてもらえた。
無事に立てた私は慌てて、声の主の顔の方を見上げる。
「あ、あの、ありがとうござ」
……言いながら、気付いた。
――今日活躍してた、
「秦野くん」……?
途中で言い澱んだ私を訝しげに見下ろす、彼。
意を決して、訊いてみた。
「あ、あの……、同じクラスの、秦野くん……?」
「そうだけど」
「あの、ほんとに、ありがとう」
「……ん。 それじゃ」
彼、秦野くんはそっけなく言うと、階段を駆け上がって、行ってしまった。