恋を、拳と共に
口の中が乾いて唾を飲み込むのに違和感があって、我に返った。
大事なノートは、俺の腕の中でくしゃっと歪んでしまっていた。
俺は、部屋に上がる時に持ってきていたスポーツ飲料で喉を潤した。
……つもりが、ヘンなところに入って、ものすごい勢いでむせかえってしまった。
しばらく咳き込んで、あちこち拭いて歩いてから、俺の頭の中はようやくゆっくりと回り始めた。
――これは、期待しても、いい、んだよな?
藤沢は、俺と話せなくてさみしいって思ってくれてるのか。
仲良く話せたらいいな、と思ってくれてるのか。
俺が、彼女にかなわないって思って、足を引っ張るって思って、
勝手に遠ざかったのは、すべて、俺の独り善がりだったのか。
歪んだノートをもう一度手に取り、藤沢のメッセージを読み直す。
俺と話したい、って思ってくれてるんなら、
じゃあ、
メール、送る。
――ちくしょう。
悔しいわけでもないのに、なぜかそんな言葉が頭に浮かんだ。
――ちくしょう、がっかりすんなよ、藤沢。