恋を、拳と共に

口の中が乾いて唾を飲み込むのに違和感があって、我に返った。
大事なノートは、俺の腕の中でくしゃっと歪んでしまっていた。


俺は、部屋に上がる時に持ってきていたスポーツ飲料で喉を潤した。
……つもりが、ヘンなところに入って、ものすごい勢いでむせかえってしまった。

しばらく咳き込んで、あちこち拭いて歩いてから、俺の頭の中はようやくゆっくりと回り始めた。


――これは、期待しても、いい、んだよな?



藤沢は、俺と話せなくてさみしいって思ってくれてるのか。
仲良く話せたらいいな、と思ってくれてるのか。

俺が、彼女にかなわないって思って、足を引っ張るって思って、
勝手に遠ざかったのは、すべて、俺の独り善がりだったのか。

歪んだノートをもう一度手に取り、藤沢のメッセージを読み直す。

俺と話したい、って思ってくれてるんなら、
じゃあ、
メール、送る。

――ちくしょう。

悔しいわけでもないのに、なぜかそんな言葉が頭に浮かんだ。

――ちくしょう、がっかりすんなよ、藤沢。


< 130 / 185 >

この作品をシェア

pagetop