恋を、拳と共に

茜 11



6時間目、ノートを書きながら、私は考えていた。

この授業で今日は終わり。
明日にはきっと、秦野くんは「もう痛くないからノートは大丈夫」って言うだろう。

だから、これが最後のチャンスかもしれない。
本当は、何かひと言書き残して伝えたいって、ずっと考えてた。
彼にとっては痛い怪我ではあるけど、せっかくの話し掛けるチャンスだったから。


でも……、
何て書いたら一番無難だろう。

キライだからあんまり話したくない、とか言われたら、立ち直れそうもない。
あんまり一方的に気持ちだけを書くのも、うっとうしい気がする。

頭の片隅ではいろいろと言葉を組み立てながら、残りの頭を使って先生の話を聞きながら、私はシャーペンを走らせていた。
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