恋を、拳と共に
授業も残り5分になって、先生が雑談を始めた。
私は今日書き取ったノートの隅に、秦野くんへ残すひと言を書いていった。
――これは、賭けだ。
私の、初めての、誰かを好き(かも)と思う気持ちが、届くことになるかもしれない。
初恋っていうほどのものじゃない、気がする。
自分でもまだ、自分の気持ちがよく判らないけど。
でもやっぱり、ひとりの人が気になる、もっと知りたい話したいと思う、ってことは、
その人のことを好きだからなんじゃないかな。
そういえば秦野くんのことは、私にしては珍しく、「だから男子ってヤダ」なんて思わなかった。
最初の出会いがお姫さま抱っこだったからか、チャラチャラしてない人だったからか。
精一杯さりげなさを装って、ノートの隅に秦野くん宛てのメッセージを残して。
でも、そこには私の最大級の想いがこめられている。
また、仲良くなれますように。
前みたいに絆が感じられますように。
そして、わずかではあるけど、希望をこめて。
秦野くんが、私のことを少しでも気にかけてくれますように。