恋を、拳と共に
自分の発した言葉が、頭の中で繰り返し再生される。
変な声だった、聞こえてなくてもう一度言う羽目になった、
もっと言い方があっただろう、って、
後悔が全身を駆け巡る。
なのに藤沢は。
「全然、迷惑じゃないし、……むしろ、ありがと、って思う」
なんて、人のいい返事をしてくれた。
ありがと、って返事。
これは、断られる前提だったりするんじゃないか。
"ありがと、でも、いいお友達でいましょうね"みたいな。
「……ほんと?」
藤沢に聞き返す。
俺の全身を、絶望感が埋め尽くそうとしていたその時、気付いた。
――藤沢は、『迷惑じゃない』って言ってくれてる。