恋を、拳と共に

いつからか、気が付くと、俺は藤沢のことを目で追ってしまうようになっていた。
藤沢の声がすると、思わず聞き耳を立ててしまっていた。

そのことに自分自身で気付いたのは、1年生も後半のころだったけど。



ふっ。
急に思い出した。
何かに似てると思ったんだよな。
やっと判った。


――犬だよ、いぬ。わんこ。


なんかあいつ、動きがちょこまかしてるし。
雰囲気、パピヨンって小型犬に似てる。
抱き上げたとき、思ってたよりずっと、軽かったのも、そっくり。


そっかー。わんこだ。
ふふ。


俺は、藤沢の頭をわしゃわしゃっとしてやるところを想像して、
ひとりでニヤついてしまっていた。



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