恋を、拳と共に

でも、どうしよう、藤沢って、そういうことに疎いから……

現に、
「今までよりもうちょっと」
って言っただけで身構えちゃってた。

喜びのあまり、がっつくような真似をしたら、即刻嫌われそうだ。
それこそ、体育祭の時の拳が、10倍になって返ってくるだろう。


今までどおり、俺は陰から彼女を見守って、応援しよう。

もうちょっと距離が縮まればいいな、っていうのが本音だけど。
藤沢を独占するとか、自分のものにとか、
……そういうのは、置いといて。

それは徐々に、ほんとにゆっくり、そうなっていけばいいことだから。


だから今は、藤沢の応援団員でいよう。



……それまで俺、がっつかないでいられますように。

明るい駅前の夜空にわずかに見える、青白い星に向かって、
俺はちょっぴり願ってみたのだった。




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