恋を、拳と共に
茜 12
「茜、最近、朝、静かになったわね」
「……ん、そう?」
夕飯を食べているとき、母に急に話を振られた。
ちょっと考えて、返事をする。
「朝、寒いからかな」
「あら珍しい。前だったら、『寒い時ほど気合入れないとね!』なんて平気で言ってたのに」
「そうだっけ」
目も合わせずに、そっけなく言ってしまう。
……そういえばここ一週間ほど、朝の"気合いの突き10回"やってないや。
「んふふ」
母の含み笑いが聞こえた。
なんだか面倒だったので、そのままおかずを口に運ぶ。
しばらく食卓に沈黙が流れた。