恋を、拳と共に
自分の部屋に戻り、電気もつけずにベッドにごろん、と仰向けになる。
まぶしくもないのに、目を閉じて、手の甲でまぶたを覆ってしまう。
何度も頭の中に浮かび上がってくる、
公園からの帰り道での光景。
「俺、藤沢のこと、好きだから」
「藤沢は、どうなのかな。俺のこと」
秦野くんの表情。
かすれたような、秦野くんの声。
周りの静けさ。
濃紺の冬の夜空。
思い返すたびに、鼓動が早くなる。
ちょっと息苦しいような感じになって、ため息をひとつついて、横向きになる。
その時、お風呂に入るようにと母が階下から呼んでいるのが聞こえて、
私は慌ててお風呂に向かった。