恋を、拳と共に
晩飯食べて風呂入って、自分の部屋のベッドに寝転んで、
ようやくひと息ついた。
――今日はいろいろあったな。
たまたま藤沢の後ろを(後ろ姿もかわいいなぁと思いながら)歩いてて、
階段上ってたら藤沢がよろけたもんで、慌てて受け止めて。
ふんわり軽いなぁ、とか思ったら藤沢が俺のこと気付いてくれて。
「同じクラスの、秦野くん?」って。
「ありがとう」って言ってくれて。
いや、判ってるんだ、祐一に言われなくても。
もっと笑顔を返したり、優しい言葉をかけてあげたりできればよかったってこと。
今思うと、あれだ。
「照れくさかったんです」
このひと言に尽きる。
急にいたたまれなくなって、寝返り打って横向きになる。
だって。
藤沢のまん丸の瞳が、俺にまっすぐ向けられてて。
「ほんとに、ありがとう」って。
藤沢の瞳と、かわいらしい声と、唇の動き。
ドキドキしながら思い返しているうちに、俺はいつしか寝入ってしまった。