恋を、拳と共に
朝――茜の場合
私の朝は、気合いを入れるところから始まる。
――さて、今日も一日頑張るか。
軽く腰を落として、ヒジを曲げて、軽く握った両手を腰の横に。
空手の突きの要領で、拳を前へ。
「うりゃ!
はっ!
とっ!」
そしていつものタイミングで、
「うるさいよー、早く降りてきなさい!」
と母の声。
恒例の"毎朝10回の突き"をさわやかに終えて、私は一階のダイニングへ降りていった。
「おはようございますーっ」
「おはよう、茜……まったく毎朝のアレは、なんとかならないのかしらねぇ?」
「気合い入れないと、なんか一日始まらないんだもん……いっただっきまーす」
「それにしてもよ……。うら若き女子高生が何であんなオッサンみたいな声で……」
「もー、まいあふぁ、うぅふぁいー」
「わかったから、早く食べなさいね」