恋を、拳と共に

朝――康太の場合


うるさい。なんかうるさい。


どうやらアラームの電子音らしいと、俺はようやく頭の片隅で気付いた。

布団の中からうつ伏せのまま片手だけ出して、目覚まし時計を上からベタッ、と叩く。


その姿勢で固まったまま、再び夢の世界に行きかけた時、
スヌーズ機能の働いた時計が、手のひらの下で、目の覚めるような大きな音を立てる。

「……ったりめーじゃん……目覚ましなんだから……」

枕に顔を埋めたまま、自分の考えに思わずウケて、ふへ、と笑ってしまう。


――今起きないと部活間に合わねー。


んぐー、と、空いてる片手を支えに膝から下を折り畳んで、横から見るとひらがなの「て」みたいな形になってから、
大きな手を置いたままの目覚まし時計をつかみつつ、四つん這いの姿勢にまで起き上がる。
と、俺を今度こそ目覚めさせようというのか、アラームが更に大きな音で鳴り響いた。
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