恋を、拳と共に


家までの道のりの間、さっき交換した秦野くんのメアドに、試しにメールを送ってみた。

『今日もいろいろおつかれさまでした。
また明日も頑張ろうね!  --藤沢茜』

送ったものの、ちょっとしつこかったかな、と思う。
さっきもまた明日、って言ったんだったっけ。
でも当たり障りのない文章、っていったら、こんな感じだもん。いいよね。



――でも、よかった。迷惑に思われてたんじゃなかったんだ。


教室でお礼を言った時は、なんだかちょっと避けられてるような気がしてたけど、私の思い過ごしだったみたい。
話してみたら、いい人だったな。
あとで、千里にもメールしとこう。


いろいろと考えていると、どこからか揚げ物のいい匂いがしてきた。
何のフライだろう。
フライの衣。さくさくの衣。
ジューシーな衣の中身。

……おなかすいた。


きゅぅ、とおなかが鳴ってしまう。
私は残りの道を、飛ぶように帰っていったのだった。


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