恋を、拳と共に
布団に入って目をつむると、脳裏に焼きついた藤沢の表情が思い起こされた。
ありがと、って言いながら、ふんわりと微笑んでるところ。
定期券を見ながら、一つ先の駅なんだねー、って言って、にこにこしてるところ。
背が低めだから電車の窓の広告のシールが邪魔なの、って、ちょっとむくれてるところ。
女子って、ころころ表情が変わるんだな。
女子はみんな、そうなのかな。
もっと、いろんな藤沢を見てみたい。
ていうか、ずっと見てても飽きないかもしれない。
子犬みたいな、かわいらしい、
わしゃわしゃしたくなるような、藤沢という存在。
――もっとたくさん、話してみたい。
また一緒に電車に乗って、楽しく藤沢と話しているところを想像しながら、
俺はあっという間に深い眠りについていた。
(第二章終わり)