恋を、拳と共に

昼休み、私は千里に声を掛けた。

「千里、今日の帰り、ちょっと付き合ってもらえないかな?」

「ん、部活のあとは特に何もないから、いいけど」

「進藤くんから学ラン借りることになってね、
 秦野くんと進藤くんと私で、今日の帰りに進藤くんちに取りに行くの。
 でもなんだか心細いから、一緒に来てほしいんだけど」

「応援団の? 秦野くんからじゃなくて、進藤くんから借りるの?」

「だってー……身長考えてみてよ」

「あ、そっか。確かに、サイズ違いすぎだね」
千里に笑われてしまった。

むー。
私が小さいんじゃなくて向こうがおっきいだけなのに。

「じゃあ、帰りは教室で茜のこと待ってればいいかな?」

「うん、ごめんね。よろしく」

チャイムが鳴って、私たちは自分の席へと戻った。


――これで安心。


私は気持ちを切り替えて、授業に臨んだ。


< 56 / 185 >

この作品をシェア

pagetop