恋を、拳と共に
教室に戻ると、祐一も部活から帰ってきていた。
「おー、康太、気が利くじゃん。一本もらうぞ」
「いや、お前の分はちゃんと払ってもらうから」
「なんだよー、ケチ……。 ほい、釣りはいらねー」
100円玉2枚を受け取って、自分の席に座って残りの飲み物を机に置く。
その時、教室の前のドアから萩野さんが入ってきて、こっちに向かって手を振るのが見えた。
――あれ、何で俺たちに手を振るんだ……もしかして、萩野さんも帰りは一緒?
「おつかれさまー。今日、実は、茜とご一緒させてもらうことになってまーす」
萩野さんが笑顔で言う。
「おー、マジ? なんか賑やかな帰り道になりそうだなぁ、康太」
「あ、うん、よろしくー」
俺は慌てて、二人に向けて精一杯愛想笑いを返す。
すると萩野さんは、そんな俺を見て、にっこり笑って言った。
「ところで、……秦野くんって、茜のこと、どう思ってるのかな?」