恋を、拳と共に

「ごちそうさまでした。じゃあ、帰りましょうかー」
ジュースも飲み終わったので、私たち四人は学校を出て、駅へ向かった。



千里は反対方向だったけど、わざわざ切符を買って、ついてきてくれた。
今度、何かお礼しなくちゃなー。

電車のドアにもたれて立ったまま、千里と進藤くんが話すのを聞いているうちに、ふっと声が遠くなった。

「あぶねっ」

へ、っと気付いてみると、二の腕辺りを秦野くんにしっかり握られている。
連日の練習疲れもあったのか、私は、恥ずかしながら立ったまま寝てしまったようだ。

「茜、だいじょうぶ?」

「う、うん、……なんか、寝ちゃったみたい、あはは」
「秦野くんも、ありがと、ごめんねいつも」
千里と秦野くんに、回らない頭で一生懸命言い訳して。


――いつも危ないところを助けてもらっちゃうな。


だんだん頭がはっきりしてきた頃、いつも降りてる駅のひとつ先の駅に着いた。
進藤くんを先頭にして、四人で電車を降りる。

こっち側の駅、初めて降りたかも。

ひとつ駅が違うだけなのに、見慣れない風景の広がる通りを、私は秦野くんたちの後を、千里と並んで歩いていった。

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