恋を、拳と共に
気付いたら、自分の吐息の合間に、着信音が聞こえる。
ふ、と身体の力が抜けて、我に返る。
――メール?
自転車を飛ばして部屋に飛び込んだから、汗が額から流れ落ちそうになっている。
俺はよろよろとベッドを降りて、部屋の窓を開けた。
夜になって少し冷えた風が、ゆるやかに部屋に流れてくる。
床に座ってベッドにもたれて、手に取ったケータイを開く。
祐一からのメールだった。
『二人きりで帰って、どうだった?
千里ちゃん、迫真の演技だったよな。
報告求む』