恋を、拳と共に

そう。

萩野さんが"買い物頼まれたから帰らなくちゃ"って言ったのは、教室で立てた作戦の一環だったのだ。

一度荷物を取りにいった祐一が、部屋から萩野さんのケータイにかけて着信音を鳴らす。
それを萩野さんが、家の人からかかってきた電話を受けて話しているかのように、演技していたのだ。

素直な藤沢はそれを信じて、俺と二人きりで帰ってくれた。


先に祐一が考えていたのは、「先に家に寄って自転車を出して、荷物を載せてあげて優しい康太くんアピール」というものだった。

しかし萩野さんはそこで、

「じゃあ、茜と二人乗りして帰ればいいんじゃない?」
と言い出したのだ。



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