恋を、拳と共に


気付いたら、別のクラスのヤツも混ざって、何人かが周りに集まり始めていた。
やべー。
さっきから俺のそばにいた祐一が、フォローに回る。

「何でもないっす、すいません、だいじょぶなんで~」

祐一がいつもの三割増しくらいの笑顔で周りにアピールしてくれたおかげで、
何とか、周りにいた人たちは自分たちの場所に戻ってくれたようだった。
俺はその頃にはもうダメージから立ち直って、応援席に座っていた。
祐一が隣の椅子に、座面をまたいで背もたれを抱えるような向きで、座る。

「なにやってんの、お前」
呆れたように、祐一が口を開く。

「いや……無意識に、こう、手が、頭をわしゃわしゃっとしようと」

「無意識はダメだろう」
祐一にたしなめられる。

「ああ。ちゃんと断りを入れないと、ダメっぽい」

俺の返事を聞いて、祐一は即座に言った。
「ったりめーだよ。女の子はデリケートなんだからよ。
 気の毒に、きっと今すんごく責任感じてるぜ、茜ちゃん」

「だよなぁ……でもさぁ……無意識だったんだよ」
俺は弱々しく、繰り返す。

「判ったから。とりあえず、ちゃんと、誠心誠意謝っとけよ」
祐一はそう言い残すと、立ち上がって自分の席に戻っていった。
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