恋を、拳と共に
学年競技の「仮装着せ替えレース」というのは、
仮装役がひとり折り返し地点に立ち、走者が順番に衣装のパーツや小物などを持って走っていき、
いかに早く仮装を完成させられるかを競うもので、速さと仮装の面白さがポイントだ。
毎年クラスごとに工夫を凝らして、素敵な萌えキャラや不気味な女装などが完成すると、
場内は大いに盛り上がる。
今年、うちのクラスは残念ながら二位だった。
速さでは一位だったが、女装の気味の悪さで他のクラスに負けたのだ。
「おっ、秦野くん、頑張ってたね!」
萩野さんに声をかけられた。
俺は軽く手を上げて、それにこたえる。
そっか、頑張ってたか、俺。
よかった。
――藤沢も、そう感じてくれていたらいいけど。