恋を、拳と共に

茜 9


午後の応援合戦は、チアダンスを踊ることになっていた。

学ランで後ろを守る男子の前で、私たち女子は制服のスカートと白のポロシャツに着替え、
軽やかに、ずっと練習してきたダンスを披露する。

両手に持っている、テープを細かく裂いて作ったポンポンが、手にまとわりついて暑苦しい。

でも元気に、笑顔で踊る。
掛け声も明るく、高らかに。



――結局、昼休みに秦野くんに会えなかった。


謝らなきゃと思った。
いくら身を守るためとは言え、秦野くんに無意識に拳を見舞ってしまうとは。


いきなり頭に触ってこようとした秦野くんのせい?
いや、でも、
頭撫でられるくらい受け入れられない自分のせい?

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