恋を、拳と共に
私たち陸上部は、さすがに走ることでは負けられない。
校名の入った試合用のユニフォームを着ているのに、一位以外で終われない。
そう思っていると責任重大な気がしてきて、どうも険しい顔になっていたらしい。
「顔がすごく怖ーい顔になってるよ、茜」
と、部長に笑われた。
「えっ……、わー、恥ずかしい、ホント?」
思わず頬を両手で押さえて、恥ずかしいのでもみほぐしてしまう。
「大丈夫だよ、半分遊びみたいなもんだから」
部長がニコニコしているので、つられてこっちも緊張が解けてくる。
ふと、視線を感じてそちらを見ると、秦野くんだった。
どうやら彼も、バレー部で出場するらしい。
私たちはバトンをつないで走るけど、バレー部はやっぱりボール持って走るのかな。
そう思いながら秦野くんのほうを見ると、ふっと視線をそらされてしまった。