恋を、拳と共に
目の前で第三走者にバトンが渡って、陸上部は一位で出て行った。
次がバスケ部、バレー部、卓球部、あとはまだ団子状態である。
このペースなら、次にバトンが回ってきた時には、余裕で一位でいけそうだ。
応援席がわあっと沸いた。
コーナーで、あろうことか、陸上部がよろけてる!
次のバトンは、バスケ部、バレー部、将棋部(いつの間に!)、卓球部、その後が陸上部だ。
慌てないで、いつもの通りに行けば、大丈夫。
私は心を落ち着けて、スタート位置に並ぶ。
隣には、秦野くんが並んだ。
コーナーを曲がって、バスケ部とバレー部、陸上部が走ってくるのが見える。
(残念ながら、将棋部は置いていかれていた)
私はバトンパスに備えて、少しずつ助走を始める。
バレー部の走者はボールを小脇に抱えて、陸上部とほぼ並んでいる。
その陸上部の第四走者の後輩が、辛うじてトップに立つのが見えた。
後輩がバトンを渡す体勢で、私に叫ぶ。
「藤沢先輩っ!」
「任せて!」
後輩に大声で答えて、バトンを受け取り、私は飛び出した。
秦野くんがボールを受け取って走り出すのとほぼ同時だった。