天使と悪魔―先生と彼女、二人の特別な事情
◆小さな展望台4◆                     「いい見晴らしだね」

私が月並みな感想を言うとようこちゃんは額の汗を拭いながら口を綻ばせ、視線を鎌倉市街へ向けた。

遥か下から高校球児が練習に励む声がこだましてくる。

山上へ吹き抜ける冷たい風に、一気に汗がひいた。

二人で並んで鎌倉市街を暫く眺めていた。

日が傾き始めた。

ふと気が付いて横を見るとようこちゃんは私を見ていた。

視線が暫く絡みあった後、ようこちゃんはきまりが悪そうに

「もう帰りませんか」と言って帰り道のほうへ視線を移した。
< 64 / 65 >

この作品をシェア

pagetop