俺カゴサイドストーリー
【虎宇】



本当に必要なものって、たぶん両手に収まる。



俺の場合、生きていく上で必要なものは気を許せる友達。



同じ野望を成し遂げるための仲間。



同じ思いをさせないように大事にしてきた妹。



そして初めて好きになった最初で最後の女。



「うまくいってよかったね」

「まぁね」

「嬉しくないの?」

「雷さんが留宇をそんなに好きだなんて思ってなかったな~って」



親の離婚を機に、アメリカへ飛ばされそうになった俺の分身が婚約した。



もちろん、裏で糸を引いたのは俺だけど…。



正直、複雑な思い。



片割れ、留宇にはイヤな思いをさせたくなかった。



あの男の犠牲になるのは俺だけでいいって、そう思っていたから。



出来る限りの悪を取り払って嫁に出すまでに成長させた。



家にいた頃は俺しか話し相手がいなくて、俺だけしか頼るヤツがいなくて。



それが当たり前だったのに。



雷さんがあっさりかっさらった。



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