俺カゴサイドストーリー
手をさしのべてしまいそうになるから。



俺の中に入ってくるな。



これ以上聞きたくない…。



「だったら愛人の娘だってデカイ顔してりゃあいい。俺は知らない」

「どうしてあたしを嫌うの?兄妹じゃ…ない…?」

「兄妹?笑わせんな。俺の妹は留宇だけだから」



パタンと閉めたドア。



ひどいことを言ったと、久しぶりに感じる罪悪感。



でも今更兄妹だなんて馬鹿げてる。



俺は馴れ合う気もなければ心を開く気もない。



俺の妹は留宇だけ…。



大事なのは留宇だけだから。



3時間ほど部屋で論文の続きや本を読んだ。



コーヒーを飲もうと、部屋から出た時。



「は…?」



世宇がドアの横の壁に寄りかかって楽譜を抱えていた。



なにしてんのコイツ。



バカじゃねぇの。



俺は知らないって言っただろ。



「どっか行け。押し付けがましい」

「教えてもらえるまで動かない…」



その言葉が留宇と被った。



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