俺カゴサイドストーリー
本音は語らないもの。



笑顔は崩さず、誰にも心を読ませるな。



相手の弱い部分から入り込み、付け入る。



裏の裏を予測し、備えは万全であれ。



使えるものは灰になるまで使う。



小さな頃からそう教え込まれて来た。



大嫌いな父親に。



学校で俺の陰口を聞いたことがある。



『新島って何考えてんのかわかんないよな』



でも、俺はちゃんと本音を言える場所、持ってるんだ。



友達、留宇、タイラ。



そしていちばん素でいられる場所がアスカなんだよ…。



アスカに期待させちゃダメだから…。



やっぱり言えないんだ…。



「昔ね、テスト満点取ったら父親がサファリパークに連れてってくれるって約束したんだ」

「満点だったのか?」

「当たり前じゃん。サファリパークのために勉強したんだもん」

「スゲーな」

「でも父親はすぐに海外出張。帰ってきてからそれを言ったら『そんな約束覚えていない』の一言で片づけられた」



あの時の失望感が未だに忘れられない。



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