ノイズ
夜の国道を走る車が、二人を避けながら次々に通り過ぎて行く。


いつまでも横断歩道の真ん中で、馬鹿みたいに突っ立っている訳にはいかなかった。


「おまえなぁ、この状況で遠慮してどーすんだよ」



「う……わ、わかったわよ。そのかわり、落としたりしたら承知しないからね!」



可奈は少し恥ずかしかったが、この状況では仕方がない。


あきらめて腰を屈め、両手を文也の首に回した。


半ば顔を埋めるようにして、背中に体重を掛ける。


文也の背中は思ったより広く感じられ……そして、暖かいなと可奈は思った。


「しっかり捕まってろよ」



「……うん」



可奈を背負った文也はフットワークも軽く、向かってくる車を上手く避け、歩道まで無事に戻ってきた。


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