ノイズ
「もういいよ。下ろして」



歩道にしゃがんだ文也の背中から、可奈はゆっくりと下りた。


「おまえ、やっぱ重いな。ダイエットした方がいいんじゃね?」



「あたしはそんなに重くないわよ。文也のおバカ!」



相変わらずデリカシーのない文也の言葉に、可奈はすっかりむくれてしまった。


悪気のないことはわかっているけれど、女の子の気持ちが文也には全然わかっていないのだ。


可奈は軽くため息を付きながら、ちょっぴり悲しくなった。


「おまえさ、何であんな所にいたんだよ?」



「沙織が横断歩道を歩いてたのが見えたのよ。だからあたし、急いで追いかけたんだけど……」



「村上が?そんなはずねーだろ」



「ううん、あれは沙織だよ。あたしが間違えるわけないもん!」



< 176 / 309 >

この作品をシェア

pagetop