ノイズ
「いや、ちょっと心配になってね。俺も昔、親とケンカして家出したことがあったから」



アキラはそう言って、グラスに残っていたビールを飲み干した。


食事が済んだテーブルの上に残っているのは、油まみれの皿と空のグラスだけだ。



「そろそろ出ようか?」



美咲は頷くと、ボストンバッグを持って立ち上がった……つもりだった。



「う……」



居酒屋の天井がグルグル回る。


激しいめまいと、体が痺れるような感覚が襲ってくる。



あたし……どうしたんだろう……?



平行感覚を失った美咲の体がテーブルにぶつかり、衝撃でグラスが床に落ちた。


アキラは苦しむ美咲に手を貸そうとせず、残忍な笑いを浮かべていた。




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