ノイズ
女の顔には見覚えがあった。


同じ医学部に通う倉内美佳子(クラウチミカコ)だ。


美佳子とはゼミで何度か顔を合わせたことがある。


確か、難病を抱えた弟のために医師を志したと話していたな。


その美佳子がシーツに包まれた格好で、有栖川教授の部屋で倒れている。


美佳子はまだ生きているのだろうか。


それとも、もう……………


沢村は逃げ出したいのを我慢して、白いシーツにそろそろと手を伸ばした。


そっとシーツをめくり、腕を取って脈拍を確認する。


弱々しい鼓動だが美佳子は生きていた。


よかった、生きてる。



沢村は胸を撫で下ろした。


< 192 / 309 >

この作品をシェア

pagetop