ノイズ
どのみち危険だということは最初からわかっていたのだ。


覚悟なら二人とも、とうの昔に出来ているつもりだった。


気が付くと、いつの間にか廊下を歩く人の姿が疎らになっている。


診察を終えたであろう、患者達が次々と病院のホールに向かって歩いて行く。


何気なくホール中央の柱時計を眺めると、時刻はとうに午後1時を過ぎていた。



「やべっ!そろそろ午後の授業始まるじゃん。俺は学校に戻るから、おまえちゃんと家で寝てろよっ」



「うん。わかった」



可奈はコクンと頷くと、薄く笑って文也を見送った。


雛森総合病院から外に一歩出ると、ムッとした夏の熱気で全身が汗ばんでいく。


可奈はスクールバッグを額の前にかざし、日差しを遮るようにして歩いた。


雛森総合病院から後藤家までは5分も歩けば余裕で着く。



< 249 / 309 >

この作品をシェア

pagetop