ノイズ
妙な違和感を感じたが、今は些細なことを気にしている暇はない。






沙織を背負って歩き出そうとしたが、足元がふらついて思わずよろける。





沙織の体重は自分と比べても大差ないはずなのだが、まるで地蔵を背負っているかのように重い。






態勢を立て直し、もう一度歩き出そうと足を前に向かって踏み出そうとしたその時だった。





「…ひっ!」




背中に感じる異様な寒気に全身が総毛立つ。





理性は必死に否定しようとしていたが、本能は危険を告げていた。






背中にいるのは本当に沙織なの?





それとも…まさかあの娘?





背中の重さに耐え切れず、とうとう可奈は屋上の床に膝をついてしまった。






可奈の頬に饐えた匂いのする髪の毛が被さり、首筋には死人のような冷たい腕があった。


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