ノイズ
ほんのりとしたローズの香りが文也の鼻孔をくすぐる。


可奈の使っているフレグランスシャンプーの香りだ。


甘い香りを嗅いでいると、誘惑に負けてしまいそうな気がした文也は、重ねていた唇を離し、ベッドから急いで立ち上がった。



「ほら、ショコラ行くぞ」



ショコラを左腕で抱き上げると、暗闇が苦手な可奈のために、壁のスイッチを非常灯に切り換えた。


可奈の寝顔をもう一度確認し、ドアノブを回して可奈の部屋を出る。


階段を下りてリビングに向かった。


「やっぱり、可奈ちゃんの部屋にいたんでしょ?」



紀子が文也からショコラを受け取って言った。


「うん。可奈はグースカ寝てたけどさ」
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