ライラック
お母さんは、私たち兄弟を育てながら、仕事もがんばってた。
出張とかも多かったけど、子供ながらに理解してたから、泣くことはなかった。
「綾乃。」
「なに?」
「お母さん、明日からまた出張でしょ?」
「…え?あ、明日!!」
…どういうことですか、お母さま。
「あら?言ってなかったかしら?」
「……」
…言ってませんよ。
母は、たまぁにこういうことがある。
だから、泣くに泣けなかったというのも、あるかもしれない。
「まぁ、ともかく明日から出張なのよ」
「うん」
「で、明日からココに行きなさい。」
そう言って渡されたのは、住所と簡単な地図が書かれた紙。
「ここは?」
「お母さんの同僚も一緒に行くことになってね。」
「うん。」
「その人のお子さんと一緒に生活してほしいの。」
「…はい?」