メガネ男子は俺様王子さま
うちに帰ると真っ直ぐ部屋に行き、ベッドに飛び込みました。
走ったせいか胸がドキドキ苦しくて、まだ震えている指で口に触れてみます。一瞬重なってすぐに離れた唇は、柔らかくって少し温かかった気がしました。
ふいにその手に滴がパタパタと落ちて、私は自分が泣いていることに初めて気がつきました。
触れていた手を握りしめ何度も口をこすり、それでも残る淡い感触に涙が止まりません。
私は完全に混乱してしまいました。彼がどういうつもりで私に触れたのか…。
今日も店屋物です、父様。顔を洗いに降りた時にメニューを机に並べ「ごめんなさい」とメモをのせると、そのまま布団をかぶって寝てしまいました。
無音状態の携帯が鞄の中で何度も震えているのも知らずに…。