メガネ男子は俺様王子さま

父様がウロウロと私の周りを歩き回っていますが、何も手につかず「どうしよう。」を繰り返すばかりです。やれやれ…



「私はこれから部屋に戻って休みます。寝てれば大丈夫ですから父様は研究室に行って下さい。かわいい子達が待ってますよ。あ、今日はお弁当作れませんでした。食堂でお願いします。忘れずに食べて下さいね。また貧血で倒れますよ。」



私の父は大学で細菌の研究をしています。まったく新しい性質の細菌を発見したとかで一応教授の肩書きをもらってますが、ご覧のように生活能力に欠ける部分があり、手がかかります。また、細菌をこよなく愛する為に培養している細菌に名前をつけ、子供のようにかわいがります。ちょっと、いやかなり変わった人です。待っているかわいい子とはもちろん細菌のことです。




「あぁ!そうだった。昨日ももちゃんに新しい湿度と温度を体験させてるから、様子を見なくちゃ。美羽ちゃん、本当に大丈夫?」



「大丈夫です。この間の熱が治りきってなかっただけですから。いってらっしゃい。」



「もう、そういうところ瞳子さんそっくり。わかった。いってきます。何かあったら研究室に電話ちょうだい?」



何度も念を押してから、やっと出かけて行きました。ふう…


あれでも38歳。大丈夫でしょうか?つくづく芸が身を助けている人の典型です。父様から細菌をとったら、ただの生活不適応者になってしまいます。あ、イラっとして酷いことを言ってしまいました。


溜め息をついて流しに溜めた水に食器をつけると、重い足を運んで部屋へと向かいました。




瞳子さんかぁ…


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