レンタル彼氏



―――

昨日は結局自分の部屋に戻った。


だけど一晩中
不安や疑いが頭から離れなかった。



直接聞けない…

意気地なし。



結局旅行のことも切り出せなかったし…




『はあ…………』



「こーら、バイト中にため息つかな〜い。」



氷が入った大きなボトルを片手に拓也くんが営業スマイルで私を見る。



「ほら、佳乃ちゃんもスマイル!」



『うぅ……』




私は無理やり笑ってみせる。



「ぎこちねーなぁ。
なんかあったの?
ため息ついたら幸せ逃げるよ。
て、あ…もしかしてもう幸せ逃がしちゃった?くくく…」



なっ………

なんてこと言うんだ、こいつ!

てゆうか、拓也くん
まじ最初とキャラ違いすぎなんですけど。



優しいと見せかけて
確実にドSだな。




『うるさいなあー。
心配されなくても幸せですー十分!!』





私は泡立てたスポンジでキュッキュッとグラスを洗った。





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