裏切りそして塀の中。
点滴に麻酔を入れて、先生に1からゆっくり数を数えますと言われて看護婦さんと一緒に数え始めた。

『1…2…3…』

4を数える前に意識が遠のいてきた。

真っ暗な背景の中心に小さい白い粒が見えた。


目が覚めると看護婦さんが道具をかたずけていた。

《何時?》

と思って周りを見渡すと看護婦さんの横に袋に入った真っ赤な物を見つけた。

『すみません。』

『目覚めた?大丈夫?もう終わったよ。』

『今何時ですか?赤ちゃんは?』

『今11時やけど。赤ちゃんはもうおらんよ。』

『じゃあその隣のは?』

ヤバいみたいな顔をしたのがわかった。

『触らしてください…。』

『先生にダメってゆわれとるんよね。』

『でもエコー写真ももらえんとでしょ?』

『んじゃあ、先生に内緒ね。』

と言ってベッドまで赤ちゃんを連れてきてくれた。

あの感触は今でも忘れない。
まだ少し温かくて、血の中でたまに手に当たる硬い棒、触りながらもまた涙が出てきて看護婦さんに制止された。

そして部屋に戻りボーッとしてると先生が一枚の紙を持って部屋にきた。


一死亡証明書一

なんで死んだ事の証明がいるのか。
私にはわからない。
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