a-girl
「家、どこだ、お嬢。」
トオル、と呼ばれた男が和に聞く。答えられない。
「忘れたんか。」
ふ、と笑う。目許に皺が寄る。
「…家、帰れない…。」
また涙がたまる。
トオルと女性は顔を見合わせる。トオルははぁ、と溜息をつく。
「オレはなあ、女とガキに泣かれると弱いんだ。」
「両方だしね。」
女の人が和の頭を撫でる。良い匂いがした。
「…おばちゃんとこ、くる?」
「すぐ捨て猫を拾うんだなお前は。」
トオルが困った様に笑う。悪戯っぽく和を抱き締めて、
「だって可愛いんだもんッ。」
と、いー、とする。

これからどうなるんだろう、と少し目の前がくらくらしたが、とりあえず今夜泊まる所には困らなそうだ。
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