吸血鬼に憧れる
今の彼女だって魅力的だと思った。十四年という短い年月を生きてきて、彼女以上に女を感じた女の子は、ほかにいない。もっとも、彼女が言っている魅力的と、僕の感じている魅力的は、違うものだろうけど。
「日の光に当たったら灰になる。きっとそれって、痛くないのよ。あっという間。ほんの一瞬だけ、人間の輪郭をした灰のモニュメントが見えたと思ったら、次の一瞬では崩れてしまうの。ぐしゃりってね」
「呆気なさ過ぎるんじゃないの、そういうの」
「だから、いいんじゃない。死ぬ時は痛くなくて、本当に一瞬、さっといっちゃったほうが楽だわ。苦しまなくていいのは、羨ましくない?」
「どう、かな」
とりあえず、僕の中にはまだ死ぬ予定は組み込まれていないから、実感が湧かない。逆に、「吸血鬼が灰になるくらいあっさり死ねますよ」と案内されたところで、喜べる気もしない。
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