吸血鬼に憧れる
「吸血鬼って、血を吸わなくちゃいけないじゃない」
「そりゃ、そういう怪物だし」
「まあね。じゃあ、血を吸いたい吸血鬼はどうすると思う?」
「人間を襲う」
「バカね。それじゃ退治されちゃうわ」
バカね。口癖だ、彼女の。しかし、それじゃあどうしろというんだか。吸血鬼が現れて、はいどうぞと首筋を差し出す人間なんて、いるわけないのに。もっとも、今の世の中いないとも言い切れないのが恐ろしいところだけど。
咥えていた部分だけをボキリと噛んで、飲み込んだ彼女は、シガチョコを指に挟みながら、夕焼けに答えた。
「相互関係よね」
「うん?」
「血を吸わなきゃ生きていけない吸血鬼。血を吸わせてくれる人間。それって、もし双方の理解の上だったら、とてもすばらしいじゃない?」
「……そうかな」
言い方による気がする。
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