吸血鬼に憧れる
「絶対そうよ。愛がないとできないわ。私はアナタの血が必要なんです。お願いです、吸わせてください。そう吸血鬼はお願いするの」
とてもまじめに言われたが、そんなに低姿勢な吸血鬼が果たしているものだろうか……。
「人間もね、アナタのためなら、僕の血をあげるよ、って。二人の間だけで、理解がやり取りされる。そういうの、愛って言わない?」
「まあ、呼ばなくもないかな」
やっぱり、言い方による気がする。
けれど、それでどうして、吸血鬼に憧れるんだろう。そういう関係なら、人間同士でも得られるはずなのに。たとえば、僕と彼女のように。
「バカね」と、三度目の口癖。
「吸血鬼だから、いいんじゃない」
「どうして」
「想像してみて。あ、適当な想像じゃダメ。私のボディラインを想像するのと同じくらいの強さで、想像してみて」
ヘンなたとえ方だったが、どれくらいのレベルで想像すればいいのか、悲しいかなよくわかった。
ぼきり。彼女がシガチョコを、もうひと齧りした。
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